目録へ戻る基本編Web殺陣教室

殺陣・素振りの前に

ここでは素振りに入る前の基礎中の基礎をご紹介いたします。しかし、どんな芸事でも「極意は結局のところ基礎に宿る」ものですから、いくら上達しても、基礎から学び返すことは沢山あるのです。このことを踏まえてしっかりと我がものにしてください。

1.手の内(握り)

2.目付(視線)

3.立ち方(四股立ち)

4.立ち方(前後立ち)


手の内(木刀の握り方)


右手は鍔の少し下、左手は右手から拳半個ほど空けて柄(つか:持ち手の部分)の端を握ります。握り方は「茶巾しぼり」といって手ぬぐいを絞るときの形になります。すなわち両手を広げた際に掌がどちらも下を向いている形です。柄を終始力一杯握りしめていることは正しく刀を振る邪魔になってしまいます。握る力は「生卵を握るように」と形容されるようにソフトに握って、刀を振り抜く瞬間、極める(止める)瞬間だけに「茶巾しぼり」の要領で力を入れます。その時の握る力は、左手7、右手3の割合で、両手とも小指と中指に力を入れます。この柄を握る要領(手の内)が上手くいかないと刀を振っている最中に刃がぶれたり、刀身を止める際に綺麗に止まらなかったりしますので、よく稽古してください。

上から見た手の内「茶巾絞り」
この様に両の掌が下を向きます

横から見た正しい手の内
この様に木刀と腕の角度が90度になってはいけません


目付(めつけ)


目付とは剣術・剣道の用語で、試合中相手のどこを見る(目を付ける)か、ということです。また剣術・剣道において一番大切なことは「眼」だと言われますが、この場合の「眼」は「見る(観る)テクニック」すなわち目付を含んだものであることは言うまでもありません。
ここで「相手を見る」とは、凝視することではありません。相手の身体の一点を(顔や剣)凝視しては、相手の意表を突いた動きに翻弄されてしまいます。そこで古くから「遠山の目付」というテクニックが重用視されてきました。それは相手の姿を全体的に見て、その後ろの遠くの山を眺めるかのようなゆったりとした視線を送ることをいいます。そうすると周辺視野(視界)が広がり、相手の動きが全体的に把握できて、不意に変化された時でも対応が利くのです。
当教室で上達が遅い生徒さんを観察していると、大抵の人は相手や自分の剣を一生懸命眼で追っています。そうすると、上段に流れた剣を眼で追えばあごが上がり、あごが上がれば姿勢が崩れ、姿勢が崩れれば刃筋が狂うという悪循環になってしまいます。視線は一定*に保ち「遠山の目付」で全体を把握する。そうすれば1対1のみならず、1対複数の殺陣を演じる際も余裕をもって行えるのです。

*「ぼんやり見る」その視線の付け所は、私の経験から言って「相手の胸の辺り」が一番良いと思います。

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基本の立ち方(四股立ち)


両太腿が床と平行になるよう膝を外に開き腰を落とします。つま先は膝と同じ方向を向き土踏まずに体重が落ちるように立ちます。腰を適度に「入れ」(「腰構え」の項参照)胸と肩の力を抜き、うなじを楽に伸ばしてあごを少し引きます。そうすると背骨が力むことなくまっすぐに伸びます。

膝とつま先は同じ方向です


悪い例
背中がまるまる
膝が内に入る

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基本の立ち方2(前後立ち)


両足先を前方に向け、それが一本の線上に重なるように右足前、左足後ろに開いて立ちます。前後の足幅は足の長さ1個半くらいにとって両足とも足の裏全体を床につけます。ちょうど綱渡りをしているような不安定な立ち方になりましたね?ではその体勢のまま両つま先をそれぞれ外側に45度程開きます。体重は右前足に6、左後ろ足に4の割合でかけてください。どうでしょう?グッと安定感が増して、何か「腰」に力が入ったような気がしませんか?これが前後立ちで、左足前に構えた時、上から見た足の形が、かたかなの「ソ」の字に似ていることから「ソの字立ち」とも言われています。

後ろ足のかかとは浮きません


特徴

「ソの字立ち」は主に古流剣術と呼ばれる伝統的な剣技において用いられて来ました。その利点は、前方に強い圧力を掛けつつ鮮やかな旋回運動ができることです。(このことから、玄舟塾の基本では「ソの字立ち」を採用しています。)

剣道等の立ち方では、前述の「ソの字立ち」ではなく、後ろ脚を平行に引く「半前屈立ち(空手用語)」を採ります。

後ろ足のかかとは少し浮きます

この立ち方の利点は、前方向に素早く、遠い距離を移動できることにあります。

大切なことは「どちらの立ち方が勝っているか」ということではなく、「それぞれに得意分野がある」ということを理解することです。その証拠に、私(筆者)が比較的自由な「立ち廻り」を演ずる時は、この二つの立ち方を自在に使い分けています。

しかし、初心者を指導する段になると話は変わってきます。運動経験が全くない人にいきなり二種類の立ち方を要求しては頭も身体も混乱させてしまいます。ですから、初心の間、暫くは一つの立ち方でしっかりと稽古をさせる必要があります。また、殺陣の流派によって目指すスタイルが違いますから、立ち方もそれによって自ずと決まってきます。ですから、皆さんの場合も無理に二つの立ち方を身につける必要はないのです。自分達がやりたいと思う殺陣のスタイルに合った立ち方を採れば良いと思います。

ちなみに「習得のし易さ」で言えば、一般的に言って「半前屈立ち」の方が身につけ易いと思います。なぜなら、「ソの字立ち」をするには、膝、股関節、足首の柔らかさが要求されるからです。運動経験がなく脚の各関節が硬い人が無理に「ソの字立ち」を行おうとすると、足先が外に開かずに丁度一本のロープの上に立っているようになり非常に不安定になります。

もし皆さんが「玄舟塾流」の殺陣を身につけたいと思ってくださるなら、先ず「半前屈立ち」で十分稽古を積んで、慣れるに従って徐々に「ソの字立ち」に移行していってください。