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これまで「攻撃技」と「受け技」を学んで来たわけですが、アクションを構成するためにはこれだけでは不十分です。ここに「やられる演技=リアクション」を加えてこそアクションが成立するというものです。多くの初心者の方が「リアクション」を恥ずかしいものと考えてあまり練習したがらないのですが、どんなに「攻撃技」が鋭くてもそれを受ける「リアクション」が冴えていなければそのアクションは台無しになってしまうのです。「リアクション」は立派な「技」なのですから、このことをしっかりと踏まえて練習をしてください。



首のストレッチ


アクションの中で一番多く使われるリアクションは「顔を殴られる」演技です。顔のリアクションは想像以上に首に負担が掛かりますから、練習に入る前には入念にストレッチをしておいてください。

ストレッチ時の注意

いずれのスタイルも反動をつけずに息を吐きながらゆっくりと伸ばします。

1.頭を両手で後ろから引っ張る

2.頭を片手で横から引っ張る

3.下顎の骨に指先を引っ掛けて後ろに押し上げる


身体を分解する


リアクションでは身体の各パーツをバラバラに動かせることが要求されます。「実際に殴り合うときにはそのような複雑な動きはしないのでは?」という疑問もおありでしょうが、「アクションは実際に殴り合うわけではありません」から「殴っていないものを殴っているようにみせる」ことが必要なのです。あたかもパントマイムの人が「実際には無いものを有るように見せる」ことと同じようにです。パントマイムの人達がそのために身体を細分化(バラバラに)するトレーニングを行うと同様、リアクションでもそれ用のトレーニングが要求されるのです。

基本の立ち方

肩幅に両脚を開いて立ち、両手をダラリと垂らします。全身をリラックスさせて静かに呼吸をします。


首を振る

正面を向いた状態からゆっくりと首を左右に振ります。日頃から姿勢を悪くしている人は、この時、顎が上がったり下がったりし過ぎますから、鏡を見て平行に振る感覚を身体に覚え込ませてください。


胸をへこます

真っ直ぐな状態から「胸だけ」を後ろにへこませます。大切なことは真っ直ぐ後ろに向かってへこませることで、単なる猫背とは異なることを理解してください。(ダンスの練習方法「コンストラクション」に通じます)


腹をへこます

胸と同様、真っ直ぐな状態から「腹だけ」を後ろにへこませます

初心者によく見受けられるのが、腹ではなくお尻を引いてしまうことです。胸と腹、腹と腰が分割されて「腹だけ」が後ろに移動するように練習をしてください。


分割補助練習

「胸だけ」、「腹だけ」を動かすという感覚が分からない人は下のような補助練習を試してください。

  • 胸の中心(胸骨)に両手指先を揃えて付けます(写真1)。指の位置はそのまま動かさずに、胸を出来るだけ指先から離すように後ろに引きます(写真2)。
(1)
(2)
  • 腹の中心(へそ)に両手指先を揃えて付けます(写真3)。指の位置はそのまま動かさずに、腹を出来るだけ指先から離すように後ろに引きます(写真4)。
(3)
(4)


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リアクション・顔


基本姿勢で正面をむいたところからいきなり、切れよく首を振ります。首の動きに釣られるように肩が後方に引かれます。この時大切なことは「呼吸」です。首を振りながら必ず息を強く吐いてください。動作が急激なだけに、首に非常に大きな力が加わりますから、「呼吸の助け」を借りて頸椎の捻挫を防ぐのです。(吐ききった後に息を止めるのは構いません)


悪い例

顔のリアクションで初心者がよくやる間違いは、首を振らずに上体を真横に倒すことです。

やっている当人の感覚ではそちらの方がしっくりくるのでしょうが、写真 (a)、(b) を見比べてもらえればお分かりのように、上体を倒している (b) の方が明らかに違和感がありますね。しかも、相手が繰り出すパンチの軌道上に被さっているので大変危険です。顔のリアクションは床と水平に首を振ることだと心得てください。

(a)
(b)
良いリアクション
上体を倒した悪いリアクション

※この「上体を倒すリアクション」が全てにおいて間違っているわけではありません。例えば頭の斜め上から攻撃された場合などはこのリアクションが有効でしょう。


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リアクション・胸


基本姿勢で正面をむいたところからいきなり、切れよく胸をへこませます。写真のように背中が丸く膨らむまで胸を引きましょう。この時息を詰めてしまうと肺の中の圧力が高まりすぎて肺を痛めてしまいます。息は強く鋭く吐き出しましょう。(吐ききった後に息を止めるのは構いません)

劇場の一番後ろのお客さんに「胸を殴られた」
ことが分かるよう大きく演じましょう


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リアクション・腹


基本姿勢で正面をむいたところからいきなり、切れよく腹をへこませます。写真のように腰の上部が丸く膨らむまで腹を引きましょう。この時息を詰めてしまうと腹腔内の圧力が高まりすぎて内蔵を痛めてしまいます。息は強く鋭く吐き出しましょう。(吐ききった後に息を止めるのは構いません)


注意

初心者でよく見受けられるのが写真のように「お尻」を引くポーズです。単純に格好が悪いのでやめましょう(笑)。腹をへこまそうとしてお尻が引けてしまうのは膝に力が入りすぎているからです。「膝を適度にゆるめておく」ことは全てのリアクションに共通するコツです。


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ベクトルを意識する


先にリアクションは「殴っていないものを殴っているようにみせる」演技だと書きましたが、それを具体的に説明するならば、「ベクトルを表現する」とも言えるでしょう。ベクトルとは皆さんも数学でよくお世話になっている「大きさと方向をもった量」のことですね。アクションで言えば「どれだけの強さの技がどの方向に向かって動いているか」という「運動の量」となります。つまり、共演者が協力をし合ってこの「運動の量」を表現することがアクションの本質なのです。

ベクトルの一致

下の写真を見てください。右の人間のパンチが左の人間にヒットしているように見えますね。この場合は右の人間のストレートパンチと左の人間の首振りが同じ方向に動いていますから、二人のベクトルは同じ方向を向いていると言えます。力強さも(片方が大げさ過ぎることなく)ほぼ同程度の力を表現できていますから、二人が作り出すベクトルが一致していると言えます。


ベクトルの一致

下の二枚の写真も「ベクトルが一致」した好例です。よくご覧になって練習の際の参考にしてください。


ベクトルの不一致

次の写真はそれぞれ「ベクトルが一致していない」例です。特に左側の写真では受け手の顔面が攻め手のパンチの軌道上に被さってきていますので非常に危険です。


よくある間違い

これは初心者でも特に女性に多い例ですが、「顔をしかめて全身を硬直させる」というものです。やはりこれも、本人の主観としては「リアルな感じ」なのでしょうが、見ているお客さん(特に後方の席の)には「どこを殴られているか分からない」ということになります。遠くのお客さんにも、ましてや背中を向けた状態でも「どこを殴られているか分かってもらう」という努力と技術が必要なのです。


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健康への注意


リアクションは身体(特に内蔵)に大変負担が掛かる運動です。いたずらに皆さんの恐怖心を煽るつもりはありませんが、健康への悪影響はきちんとお伝えしておかなければなりません。皆さんも、あまり神経質にならずに、しかし身体の異常には細心の注意をはらいながら練習を行ってください。

頭部(脳)への影響
「顔のリアクション」は脳を激しく揺らします。その影響は、熟練した人間が勢いを付けすぎてこれを行うと、自ら脳震盪を起こして気を失ってしまうほどです。皆さんの場合、これほど激しく頭を振る技術は持ち合わせていませんからこのような心配こそありませんが、やはり何十回も練習をしていると頭がフラフラしてくることがあります。これは軽い脳震盪を起こした状態で、このような状態で飲酒(高校生はもちろん不可ですよ!)、夜更かしなどをすると脳に多大なダメージを与えてしまいます。そのような時は、後頭部を濡れタオルなどで冷やして安静を保ち、早めに就寝しましょう。また頭部に違和感が残るうちは練習を再開してはいけません。無理に練習を再開すると、この脳震盪が慢性化してしまい、長期的に偏頭痛等に悩まされることになります(パンチドランカーと言います)。
首(頸椎)への影響
「顔のリアクション」は頸椎にも大変な負担が掛かります。ストレッチもせずにいきなりハイスピードでこれを行うと「グキッ」という鈍い音と共に頸椎を捻挫してしまうでしょう。頸椎の捻挫は「むち打ち症」とも呼ばれ、非常に治り難いものです。また、脳と同じで慢性化し易いですから、一度首を痛めてしまったら、完治するまでは練習を再開しないでください。

腹部(内臓)への影響
「胸・腹のリアクション」は内臓諸器官を激しく揺らします。脳ほどの悪影響は無いにしても、寝不足や疲れた時にこれを行うと「吐き気」などを催します。体調の悪いときは無理をせず、練習を休む勇気も必要です。


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